【東京支部】 「2020年東京オリンピック・パラリンピックの関連施設等に対する提言」 を発表

 新建東京支部は「2020年東京オリンピック・パラリンピックの関連施設等に対する提言」を発表しました。(2014年5月31日支部幹事会にて確認・発表、6月7日全国常任幹事会にて一部修正、連名にて発表)

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2020年東京オリンピック・パラリンピックの関連施設等に対する提言

2014年6月7日 新建築家技術者集団 東 京 支 部 

新建築家技術者集団 全国常任幹事会 

 

 私たちは、東日本大震災と福島第一原発事故の被災地の復旧・復興が最優先されるべき大事なこの時期に、オリンピック・パラリンピックを東京で開催すること自体に大きな疑問を感じます。しかし、世界の人々とアスリートに開催を約束したのは社会的事実であり、その責任は果たすべきだと考えます。

 一方、現在、主催都市東京は直下型地震が襲う確率が高まっており、2020年をピークに他の道府県同様の人口減に転じ、少子高齢化が進むと推測され、東北では被災地の復興が遅々として進んでいないという大きな課題を抱えています。さらに重要な問題は、オリンピック・パラリンピックのために大量の工事が始まると、既に入札不調が報道されているように、高騰している全国の工事費が一層上昇し、熟練の職人不足が深刻化することです。優先すべき東北被災地の復興の障害になり、都民に必要な保育園建設などの公益的事業や、全国の本当に必要とされる工事にも障害をもたらすでしょう。

 このような中で開催する以上は、少なくとも、オリンピック憲章と国際オリンピック委員会(IOC)が定めた「アジェンダ21」を遵守した持続可能な計画、つまり、既存施設を改修して最大限活用し、新規施設の建設を極力避け、工事量の少ない、環境破壊を小さくする計画であるべきだと考えます。

 

今年は、IOCのプログラムにより、2020年東京オリンピック・パラリンピックに関係するすべての分野の基本計画を策定することになっており、現在その作業が進行していると思われます。しかし、新しい競技施設の計画案について、多くの建築家技術者や市民の団体等が疑問を持ち、東京都や独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)等の関係当事機関に対し厳しく説明を求めているにもかかわらず、当事機関はそれらに真摯に答えているようには見えません。それどころか、強引に、既定路線通りに基本計画をまとめようとしているように思われます。

 私たちは、現地調査を行い、検討し、国立競技場をはじめ既存の多くの競技施設を改修して活用することは技術的に十分に可能と確認しました。今進められている巨大で異様な新国立競技場計画を実行すべきではないと考えます。まずは、当事機関は現在の国立競技場の取り壊しを中止し、真摯に考えている人々の意見を誠実に受け止め、現計画を再考することを強く求めます。

 以上の観点に立ち、私たちは、建築とまちづくりにたずさわる技術者として、オリンピック・パラリンピックの関連施設を計画整備するにあたり、守り、実行すべきと信じる、以下の6項目を提言いたします。

 

1.駒沢の競技施設等、既存のスポーツ施設を改修して最大限活用しよう

 競技施設は選手村から半径8kmに設置するとの基本方針により、臨海埋立地に多くの施設を新設、仮設する計画になっています。これにより、1964年の東京オリンピックのために建設されて使われた、駒沢オリンピック公園の競技場と二つの体育館や戸田の漕艇場等が、2020年に十分使用可能と考えられるにもかかわらず、全く使われないという不合理なことが起こっています。公表されている会場計画には、川越市のゴルフ場や陸上自衛隊朝霞訓練場の射撃場、調布市の東京スタジアム等、8km以遠の数施設が含まれています。ならば、それらより近い駒沢等の施設を除外する理由はないはずで、ぜひ活用するよう提言します。

 臨海埋立地は、安全性やアクセスに問題があり、狭いエリアに選手や人々が集中するのは混雑を招き危険ですらあります。その上、液状化対策費がかさむという問題もあります。この地域での新規建設は、むしろ避けるべきではないでしょうか。ひるがえって考えれば、東京は公共交通機関が整備された都市であり、都内、近郊にアクセスし易く、かえって、様々な競技施設を適度に分散させた方が、選手と市民の交流を含め、東京らしいより良いオリンピックになるのではないでしょうか。

 この際、既存の施設に必要な改修を施し、最大限活用することを強く提言します。それにより、価値ある遺産を使いつづけ、未来へ手わたすモデルにしようではありませんか。さらに、仮設で対応可能な施設は仮設で対応し、既設・新設施設に仮設を組み合わせることも検討して極力無駄を減らすべきと考えます。

 どうしても新設が必要な施設は、大会終了後、市民の日常的なスポーツ振興に役立つ、使いやすい施設とし、簡素で将来の維持管理費用が掛からないものとすべきです。人々の生活と環境を破壊せずに国民の身近なスポーツ参加を増やしていく。これこそ、オリンピック精神に最も沿った道ではないでしょうか。

 

2.歴史があり思い出の残る既存の国立競技場を改修して使おう

 1964年東京オリンピックでメイン会場として使われた既存の国立競技場は改修すれば活用できるにもかかわらず、それを壊し、膨大な工事費(約1,700億円以上?)をかけて開閉屋根付きの巨大な競技場を新設しようとしていますが、これは明白な無駄と考えます。この場所は第2次世界大戦後独立したアジア新興諸国が中心になって創設したアジア競技大会の第3回大会メイン会場でもあり、戦時中、旧施設では学徒出陣の壮行会が行われた場所です。簡単に壊してしまっていい建物ではありません。

 私たちは、昨年来、心ある建築家技術者や「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」に結集した市民が新国立競技場計画に関して批判し主張していることに共感し、賛同します。

 すなわち、新国立競技場計画の敷地は、明治公園と日本青年会館、都営霞ケ丘アパートを取り壊して拡大する計画になっていますが、それでも建物の規模に比して圧倒的に敷地が狭く、万一避難の必要が生じた時に危険であり、出来上がった施設の高い外壁(最高高さ70m)が周辺のまちに圧迫感や風害を与えるという問題があります。

 何より問題なのは、この敷地を含むエリア一帯が、日本で最初に指定された風致地区であり、高さ制限も15m(高度地区指定上は20m)でしたが、設計コンペの後、しかもたった1回の都市計画審議会において、議論らしい議論もなされず、事務局提案のままに最高高さ75mへの緩和を決定したことです。歴史的に美しい景観を維持すべきとされるこの場所に、誰が考えても、不似合いなデザインの巨大建物が計画通り実現するならば、銀杏並木、絵画館などの市民に親しまれた得難い景観・環境が取り返しのつかないダメージを受けることになります。

 その上、この巨大な施設のオリンピック後の維持管理は容易ではなく、未来世代に大きな負担を強いるおそれが大です。

 また、立ち退きを迫られている都営霞ケ丘アパートの住民には前回のオリンピック時に現国立競技場建設のためにここに移住させられた高齢の方が多く、形成されてきたコミュニティを壊して再び分散移住を強いることは居住の権利上、許されないと考えます。

 加えて、大人数が参集する各種の集会や市民主催のフリーマーケット等の会場として多様に活用されてきた都心の貴重な広場である明治公園に代わる場所は他になく、失うわけにはいきません。

 この新国立競技場建設計画は撤回し、既存の国立競技場を改修して、一時的に大量の客席が必要ならば仮設を組み合わせて設け、日本の建築技術の粋を結集して対応するべきです。

 なお、3月末に明らかになった「会場施設等の配置図」によると、拡げた敷地でもサブトラックが確保できないため、絵画館前の広場に設けるとしています。しかし、計画は廃道を含み、何より、青山通りから絵画館へ至る銀杏並木道の左右対称性を破壊して絵画館との関係性を切断し、競技場周辺の多数の高木を伐採して新競技場と青山通りを幅広のうねるゾーンで結ぶ内容で、現状を大きく変更するものです。これは、先人の周到な計画と長年都民に親しまれてきた景観を全く無視した冒涜的なもので到底容認できません。計画を撤回し、会期中に万一、サブトラックをそこに設けるとしても、そこへ至るルートは必要最小限とし、終了後には速やかに復旧することを強く求めます。

 

3.カヌー競技場を葛西臨海公園内に新設する計画は中止するべきです

 市民の憩いの場、葛西臨海公園内にカヌー競技場を新設するという計画が発表されています。ここに計画されているのはスラロームといい、渓流のような激しい流れでの競技です。海を埋め立てて出来た葛西臨海公園に、巨額の工事費をかけ、スタート地点の高さ8m前後、延長300mの「人工の渓流」をつくり、スタート、ゴールの2か所にそれぞれ約100m×約100mのコンクリート製のプールをつくり、淡水を溜め、ポンプで循環させるという計画です。カヌー競技は自然と触れ合うところに醍醐味があるのであり、このような人工施設をつくっても将来日本のカヌー競技を愛する人口が増えるとは考えられません。しかも、この施設を造ることによって、造成されてから現在までに長い時間をかけて多くの人々が育ててきた「人と自然が触れ合う池や湿地や樹木」が完全に破壊されてしまいます。日本野鳥の会や市民団体は、公園に隣接する都の駐車場を代替え地とするよう求めています。私達は、もし自然の渓流でのカヌー競技がどうしても実現できないのなら、都の駐車場に建設場所を移すことを支持します。

 さらに、ここに限らず、多くの2020年東京大会の新規施設の計画が集中する臨海部は、埋め立てて数十年の間に樹木が育ち、虫や小鳥、魚などと触れ合える市民の憩いの場に育っています。多くの新規施設の計画は、それらの樹木を伐採することを前提にしています。例えば、夢の島に計画されているアーチェリー会場もそのひとつです。樹木を伐採して施設をつくることは、そこに形成された生態系を破壊し、基本的にIOCのアジェンダ21に反する計画であり、この面でも既存の施設を出来る限り利用するという原点に立ち返るべきです。

 

4.選手村をどこに、どのような形で立地させるかについて再考しよう

 選手村の現在の計画は、晴海に、民間デベロッパーに丸投げして13,000人分の高層住宅を建設し、大会終了後はデベロッパーがマンションとして売却するというものになっています。しかし、選手村建設の予算は1,000億円という途方もないものです。しかも、晴海の予定地は防潮堤の外にあって、本来住宅を建ててはならない場所であり、最寄り駅は「勝どき駅」のみで、この駅は近隣での超高層マンションの建設によりすでにパンク状態にあります。もし、恒久的な住宅として計画するのであれば、安全の問題、アクセスの問題、学校などの公益施設の問題等さまざまな問題を解決し、少子高齢化時代における都民の住宅はどうあるべきかという政策意図を明確にして取り組む必要があります。ロンドンオリンピックの選手村は終了後、低所得者向けの住宅にする政策意図を持って取り組まれたと報じられています。また、選手村を恒久施設でなく仮設とする可能性等を検討する必要があると考えます。

 

5.各種施設の設計者の選定と設計過程をオープンに進めよう

 新規のオリンピック関連施設の企画立案に当たり、日本建築家協会(JIA)関東甲信越支部は、昨年11月、都知事あてに、「新国立競技場」とその他の施設について「市民参加の設計プロセスを経ることで、誰でも納得のいく建築にする必要がある」として、施設計画の立案に第三者機関の設立を要請しました。その第三者機関は、建築家、都市計画家、ランドスケープやコミュニティなど多様な専門家で構成するとしています。これは検討すべき大事な内容だと私たちは考えます。

 新規施設であれ既存施設の改修であれ、企画内容はじめ設計者の選定から設計過程までがオープンに公開されて誰もが知ることができ、競技者や利用者の要望を最優先にした簡素で優れたデザインにより施設建築が創られることを、私たちは建築を愛するものとして切に望みます。

 

6.防災を最優先し、誰もが支障なく移動でき、緑豊かな成熟した都市を

 私達は、今回のオリンピック・パラリンピックを一つの契機として下記の2項を重要目標にした持続可能な東京の都市づくり・まちづくりを提案します。その場合、ゼネコンに巨大な工事を受注させて経済を活性化するというような発想はあってなりません。オリンピックに便乗するが如くの乱開発は厳に規制すべきです。

 ①直下型地震に際して危険と考えられる、ゼロメートル地帯や、密集市街地への対策を加速すると同時に、東京中に「コミュニティ」を育てることによって防災体制を構築する。耐震診断、耐震補強、感震ブレーカーの設置、家具の固定などについて、具体的な目標を決め、それを実現するために新たな補助制度の導入や、積極的PRなどにより、きめ細かい防災対策を実施する。また公共施設や橋や高速道路等のインフラの老朽劣化に対し修復強靭化を実行する。

 ②東京を現在のような車優先のまちから、歩行者や自転車が安全快適に使える緑豊かなまちに造り替える。身障者にも高齢者にも幼児をつれた家族にも優しいまち、誰もが支障なく移動できるユニバーサル・デザインのまちに造り直す。外国から来たパラリンピックの選手や関係者に対しても誇れるまちに造り替える。

以上

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